画家 香月泰男 シベリアシリーズに寄せて

黒い太陽が描かれている

マイナス30度の極寒の地
シベリア抑留の強制労働

瞼を閉じてもなお見えてくる
倒れて逝く友の顔、顔、顔、

あのときから遙か数十年が過ぎても
聞こえて来る凍土をうがつ、つるはしの音

描いて置かなければ、それが
吾が命に与えられた使命だと画家は想う

ふるさとの地にあって生み出された
シベリアの暗黒、黒しか見えて来ない
太陽も、森も林も ツンドラの雪原さえも
黒に染まってゆく、

家族との憩いのなかにも凍みて
来るシベリアの黒、

命を削っていることもわかって
いるのだ、その削りかすさえも、もはや
黒に呑み込まれていった、

最後のキャンバスにかかっていた
シベリアの黒




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この絵は僕が香月泰雄の心のなかを詩にしたその思いを絵にしたものです。彼のシベリア抑留から帰ってきてもなお心にしみ込んでいたあの黒の色を思って描いてみました。

死んだあとも自分の骨はシベリアから持ってきた
サンジュアンの樹(豆の木)の根元に埋めてほしいと言った
のです。その木は大きくなって彼の家の庭にあります。

もう2度と行きたくないであろうシベリア収容所で食べた
豆の種です