松本竣介


深い沈黙の水底におりてゆくと
そこは音のないブルーな世界が
広がっている。

町も人も工場もすべて静寂の中に
埋もれていくようである。

かって聞こえていたやさしい
鳥の声や風の渉る音、せせらぎの
流れの中に息づいていた安らぎの
響きはもうどこからも聞こえて
こない。

大地の色と水底の色、その二つの
色によって、作り出されてゆく
絵画の世界に、なぜか心が
惹き付けられてゆく

懐かしい郷愁がただよう中に
沈み込んでくる寂寥、重い沈黙に
とらわれつつ、無言の町はその姿を
表し、人の息吹の消えた道、陸橋、
運河が続く

そんな中に、自らの姿を
しっかりと大地に根を下ろして
いるかのように描い自画像に
強い意志の現れを感じます。

聴覚を失ってから絵を描き始めた
松本竣介の世界は静けさに満ちて
いる水面と激しい内面がせめぎ
あっているような気がするのです。

モンタージュの重なり合った
風景と人物があるときはデッサンの
線だけで描かれていたり胴体だけ
だったり足だけだったりする
またあるときは重厚な輪郭と
マチエールを与えてあったりする。
その線の輪郭が
透明感を絵の世界に与えて
いるのでしょう

先日桐生の大川美術館に行った折に
松本竣介のたくさんの絵をみることが
できてhPにのせることにしました。

自分の好きな画家の絵にいつでも
ふれることができるのがhpの
良いところだと思いますができたら
本物をみることが一番だということを
いつも心にとめて置きたいものです

またどこかで企画展などあったときは
彼の絵に会いにゆきたい気がしています
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